「悲観する力」森博嗣著を読んだ。
本書の帯に書かれている、「楽観的な思考が、成功を遠ざける。」とのコピーが目に留まった。
楽観的に物事を捉えることは良いこと、という認識でいたが、本書のタイトルにある「悲観する」ということが、悪いことばかりではないことも、なんとなくわかっているつもりだ。
なんとなくわかっているつもりでいるよりも、著者の言葉から悲観することで得られるものが、どんなことなのかを知っておきたくなった。
マイナス思考というと、なんとなく「消極的」な響きに聞こえるかもしれないが、必ずしもそうではない。
本当の価値や合理的な手法を求めるために必要な慎重さが生まれ、結果的に実行した場合の成功率を高める効果がある。
ブレーキのない車よりも、ブレーキがある車の方が、コースを速く走ることができるのと同じだ。
(「悲観する力」本文より抜粋)
悲観することができるからこそ、もしかしたら~という未来予測をし、細かなことにも配慮した結果、上記の抜粋箇所にあるような成功率を高めるとのことは、自らの経験と照らし合わせてみると、そういえばと思うこともある。
私自身も、著者ほどではないかもしれないが、心配性の部類だと思っているので、事前の準備は欠かさないことが多い。
普段の持ち物も、小さなバッグでは不安になるから、どうしてもそれなりの大きさのバッグばかり使っている。
著者のご子息のように辞書を持ち運ぶことはないが、わからないことや不安なことは都度スマホで調べてたり、確認しているから、似たようなものだ。
「上手くいかないかもしれない」と心配するだけの「悲観」では、明らかに不充分である。
上手くいかない原因として、どのような場合が考えられるか、という方向へ思考を向ける必要がある。
(「悲観する力」本文より抜粋)
ただ単に悲観するのではなく、思考の持っていき方についてヒントを与えてくれる著者の言葉からは、考えることをやめてはいけない、ということを示唆しているように思えるのだ。
誰かに言われたとおりに行動すること、何も考えないようにすることの方が気楽なのは違いないけれど、自分で考えることをやめてしまうのは、味気ない生活になりそうだし、できることなら避けたいところだ。
本書では、悲観することも楽観することも、どちらの方が素晴らしい、ということを記述しているわけではない。どちらも必要な思考だ、ということが読み進めていくと、よくわかる。
その時々の感情ではなく、思考し自分で判断し考え、答えを導き出すことの大切さを考えさせられた。
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