「ウツボカズラの甘い息」柚月裕子著を読んだ。

育児と家事ばかりの主婦である自分の生活に、どこか嫌気がさしている節すらある高村文絵が、日頃の憂さ晴らしの為に応募していた懸賞で、芸能人のディナーショーに当選し、ディナーショーへ足を運んだことから、同級生を名乗る女性に声をかけられたことから、物語が動き始める。

同級生の加奈子との再会で、文絵は、過去の輝かしい自分の姿に戻るべく、ダイエットを決意し、見事成功する。

加奈子にけしかけられるがまま、会員制の化粧品を販売するセミナーの講師を務め始めた文絵は、専業主婦のままでは手に入らないような金額を手にするようになり、それまでの人物像とは真逆のようになった。

人間誰しも、なにかのきっかけで、大金を手にすると、こうなるだろうな、という姿が如実に現れていた。

文絵は夫に内緒で、セミナー講師をしていたことで、大金を手にする後ろめたさと喜びとの天秤が常にあっちこっち揺らいでいたように思う。

しかし、女性というものは、いくつになっても大なり小なり美を追求する気持ちを胸に秘めていることについて、作中に描写されていた。

文絵がセミナー講師にやりがいを見出し始めた頃、ストーリーは急展開していく。

本作を読むことで、文絵という女性の危うさももちろんあるが、夫婦のこと、女性であり続けるということ、家族のことなどに絡めて、お金のあり方を考えさせられた。

作中で、刑事が幸せについて、考えるような場面があり、お金があるから、学歴があるから、といったことだけでは幸せをはかることはできないな、ということに気づかされた。

本作は、いろんな人の視点で描写されている点でも、楽しめる作品だった。