「桜の首飾り」千早茜著を読んだ。
本書は、誰かにとっての桜、というようなテーマの7つの物語が収録された短編集だ。

桜を好む人、桜を嫌っているように装う人、桜の季節の思い出に耽る人など、桜というテーマだけで、人それぞれ桜について思うことが異なることが、各作品で描かれている。
本書を読み進めていくごとに、桜に限らず、生きていく上で綺麗なものだけではないこと、どうしようもないことを各作品の主人公の心中、発する言葉などに同意する気持ちになることもあった。

誰かとの会話で自分が欲していた言葉などが、どんなことなのかに気づくこともある。そういう時に限って、自分が欲していた言葉を口にするのは別の人だったりする。
誰かと本当の意味で、わかりあうことなんてない。
わかりあっている、という幻想を見ているだけでも、それを口にしない幸せもあるだろう。

タイトルになっている桜の首飾りについて記述されている箇所は、桜の花びらの美しさの一過性をズバリ表現されていた。
桜の季節に、本書を読めて良かった。