【読書感想】あとかた

読書

「あとかた」千早茜著を読んだ。

本書は、恋愛にまつわる連作の短編集だ。

短編同士が、どこかで繋がっていることで、登場人物たちの心情などが、同じ事象を それぞれの視点で どう捉えているか、を楽しめた。

本書のある短編の中で、自分の部屋に居候している女の子の笑顔が見たいから、自分も笑おう、というような描写が、とても印象的だった。

誰かを笑顔にしたい、誰かの笑顔が好き、というのは、これまでも見聞きしたことがあった。

自分に近いところにいる人だけれど、友達にもなりきれていないアンバランスな関係の相手との、その先を掴めそうな頃合いで、笑顔が見たいから、自分も笑おう、というのは素敵な表現だ。

恋愛の連作短編集である本書は、恋愛のみならず、人と人との関係のあり方までをも考えさせられた。

女同士の友情らしきものに見え隠れする、現実にはどこにでもありそうな話題なども、日常で口にすることを憚ってしまう人が多そうなことも描かれているところが、私にとっては千早茜さんらしい、と思えた。