「ふたりぐらし」桜木紫乃著を読んだ。

夫の視点からの短編、妻の視点からの短編が交互に織り成す本作は、夫婦のこと、義理の親たちのこと、自分たちの生活のこと等、誰しもが出くわす可能性があることが描かれている。

子どもがいる生活も良いと思いつつも、現状の夫婦だけの生活が嫌なわけではないが、女性の身体的なリミットを考えなければならない時期でもある、というのは、私にもあてはまるが故、読んでいてぎくりとする場面もあった。

互いの親との距離感、夫婦や親子であってもそれぞれが持つ秘密めいたことなど、特別なことではないけれど、妙な緊張感や後ろめたさがあるような事柄に、自分自身を重ね合わせてみるなどした。

本作の主人公たち夫婦は、夫が元映写技師でアルバイトをしていて、妻は看護師をしている。

金銭的な悩みや負い目のようなものは、夫の視点、妻の視点、それぞれ描かれている。

結婚し、夫婦となったことで、直面せざるを得ないのは金銭的なこと、子どもを望むかどうかというところかと思う。

なにか互いに気に入らないことがある時でさえ、日常で口にする食べ物を目の前にすると、嫌なことなどがたとえ一時的なものであったとしても、大抵消え去るような関係は、少しばかり羨ましく思った。

また、物語の終盤の方で、隣家のおばあさんと出かけたディナーショーでの帰り道、妻が自分たちが幸福であるかを確かめた場面が印象的だった。