「やがて海へと届く」彩瀬まる著を読んだ。

本作は、一人旅へ出かけた親友が消息を絶ったことを受け入れられないでいる主人公の語りや日常が描かれた章、誰とも言い切れない誰かが語る章が交互に表現されている。

どう扱うか、がわからないけれど、なにかしたい、という親友への気持ちがある主人公は、親友の恋人であった男性から形見分けの連絡があったことから、徐々に親友の不在を自分以外がどうしているかを知ったり、想像したりする。

親友の不在だけではなく、職場の上司の突然の自殺というのも、主人公にとっては、上司の存在が自分にとってどんなものだったかを導き出すこととなる。

形見分けしたものたちを自分の生活に取り入れることで、思い出す親友とのやりとりも、見知らぬ人との出会いなども、主人公にとっては足を止めず、先へ進むきっかけとなる。

主人公が先へ踏み出す一歩を後押ししたのは、親友の形見であるスニーカーでもあるし、親友の恋人だった男性の言葉であり、主人公の職場の同僚の存在でもある。

本文中、主人公が出会った女子高生たちが、自然災害のこと、大切な人との突然の別れについて述べるシーンがある。

そこで、彼女たちは有事のことなどについて「忘れないようにしよう」となにかにつけて呼びかけることへの違和感などを口にしているところが、印象的だった。

忘れないようにしよう、と呼びかけ続けることへの胡散臭さは、口に出さずとも心の内では思っている人が少なくない。

主人公にとって、親友の不在についての捉え方について、年下の女の子たちとの会話で心が救われることは案外大きかったのではないかな、と想像する。

本作を読み終えて思うことは、亡くなった人のことを理由に立ち止まるのではなく、生きているからこそ先へ進めることを謳歌した方が良いのかもしれない、ということだ。