「紫の女」花房観音著を読んだ。
本書は、源氏物語をモチーフにして、現代風にアレンジした7つの短編が収録されている。

私は、これまでに源氏物語を詳しく語れるほどには、読んだことがない。
本書の各作品では、そのタイトルごとに、源氏物語の中では、どんな物語だったかを登場人物たちが語るなどするところが、ありがたくもあった。

どの短編も、一般的にイメージするような幸福に満ちた物語ではなく、かといって男女のもつれ、とするほどではないが、どこかドロリとしたものがあった。
男性が耳に入れたくはないだろう、知りたくなかったであろうというようなことを、口にして男性に衝撃を与える女性の存在といったら、ある種の小気味よさすらあった。

本書の作品たちは、どれもモチーフとなった源氏物語をちゃんと読んでみたくなるような内容だった。