「うつくしい人」西加奈子著を読んだ。
本書は、他人の目を気にして生きてきた主人公が、仕事を辞めたことをきっかけに、一人旅に出たことから始まるストーリーだ。
人の機嫌を窺うなど、ずっと周りの目を気にしてきた主人公は、自分がいかに周囲の目を気にして生きてきたかを旅先で思い知る。
旅先のホテルのバーで出会った風変わりなバーテン、イギリス住まいのドイツ人の青年とのやりとりから、主人公の心がゆるんでいく様子が描かれていた。
これまで素直過ぎる上に美しい姉のことを疎ましく思いながら生きてきた主人公は、この旅で姉への感情もやや変化したように思えた。
主人公が、数日間宿泊し、過ごしたホテルでの出来事は、決してきらびやかなものではないけれど、旅先ならではの出会いなどを通して、たしかな心の移ろいが読み取れた気がする。