岩井志麻子さんによる、知人・友人から聞いた話、ご本人が経験した話をもとにした「現代百物語」シリーズ第5弾「現代百物語 殺意」を読んだ。
基本的にすべてが実話といっても、場所などが特定されぬよう人物も含め、脚色されている、という怖い話ばかりが、99話語られている。あとがきが、100話目の代わりとなっているのも、シリーズでおなじみだ。
このシリーズを読むと、生きている人間の怖さが、こんなにも日常に潜んでいる、ということが伝わってくる。
霊感や占いなどといった特殊な能力の有無についても、望んで持つものではないからこそ、本物に遭遇したらなどと想像を巡らすなどした。
ある話で、虚言について語られていたことが記憶に残った。下記の通りである。
意図的に相手をだましたりごまかしたりするときだけでなく、ただその場限りの見栄を張るための嘘をつくときも、なぜか具体例として挙げる数字は三か八が多いという。
そこに五が加わるという説もある。
「現代百物語 殺意」本文より抜粋
“嘘の三八”あるいは“嘘の五三八”と言って、上記のような場面で見かけることが多いそう。この話を読むまで、このことを知らなかったから、今後は誰かの話を聞く時に、その人の印象が変わっていくのかもしれないな、と思った。
誰かの話を疑うことばかりだと、人間関係を築くのに苦労するが、話の内容などが怪しいなと思う時には、このことが頭の片隅にあるかどうかで心持ちが異なるだろう。
現代百物語シリーズを読んでいると、ゾクゾクするというよりは、どこか不安になってくるような話ばかりに出会う。
怖い話を見聞きすると、トイレやお風呂に行くことが怖くなる、というような表現もあるが、現代百物語シリーズはそういったものとは別の怖さだ、と思っている。