スポンサーリンク

【読書感想】夢に抱かれて見る闇は

読書
この記事は約2分で読めます。

 怪談短編集「夢に抱かれて見る闇は」岡部えつ著を読んだ。

 この短編集は、語り継がれる怪談というよりは、現代における怪談というべきストーリーばかりだ。
 どの短編作品も、主人公は30~40代の女性だ。主人公たちは、それぞれに30~40代ならではの悩み、もがきなどが描かれている。
 私も30代半ばに差し掛かっているからか、どの作品の主人公たちの心情などにも、共感するようなことがいくつもあった。

 それぞれの作品の中で、何を目撃してしまったんだろう、と思うような描写があるのは、怪談話だからこそだろう。創作されたストーリーとはいえ、現実のどこかで起きていそうだな、という現代社会や人間の生々しさを読み取れた。

 解説での門賀美央子さんの言葉で、読後感にあるものに納得したので抜粋する。

 人生と真剣に向き合うことなく、その時々を適当に流し、何もなければそれでよし。他人を道具としか見ない生き方に疑問を感じない層は、現代社会においては確実にマジョリティだろう。
 岡部えつは、その手の「平凡で無自覚な悪人」を書かせるのが抜群にうまい。

「夢に抱かれて見る闇は」解説より抜粋

 上記の解説の内容を読み、収録されている作品が、必ずしもハッピーエンドではないことで表現されているものが、何なのかを察することができた気がした。

 どの作品の主人公たちも、片方の話だけを見聞きする分には、同情しそうになるが、双方の話を知った時、何とも言えない脱力感のようなものに見舞われそうになる。
 誰かを出し抜きたい気持ち、誰かを見下しているような態度など、若い頃の自分がしてきたことが、忘れた頃になって因果応報ともいうべき形で襲いかかってくることもある。

 解説でも述べられていたことではあるが、平凡で無自覚な悪人ほど、誰かを惨めな気持ちにさせ、心折れるような現実を突きつけることがある。
 自分はそんなことしたことがない、なんて言えない。

 自分のしてきたことを浄化させたい、なんて虫の良すぎることはできないが、これまでの自分と向き合うことの大切さを改めた。