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【読書感想】臣女

読書
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 数年前、テレビ番組で紹介されている時から、なんとなく気になったままでいた「臣女」吉村萬壱著を読んだ。

 本作品は、ある日、夫の浮気を知った妻の身体が、日に日に異形のものへと変化する。妻の身体が、日々変化していくのは、まるで夫の浮気を責めるかのようでしかなく、妻自身も身体の変化に戸惑い、感情の起伏が激しくなっていく。

 夫は、仕事の傍ら作家業をしていたが、妻の世話をするようになり、作家業もままならなくなる。夫の仕事は常勤だったものが、組織改編をきっかけに非常勤になったことから、作家業での収入を頼りにせざるを得ないものの、妻には常勤で勤務している風を装っていた。

 突然変異で、みるみるうちに身体が巨大化していく妻自身の胸の内は、決して語られない。すべて夫の視点で、語られている。夫が、妻の世話をするようになって、仕事をしたり作家をすることは、生活との区切りをつけることがある程度できるけれど、主婦業は終わりがなく、栄養のある食事を用意すること、衣服を洗濯し、部屋を清潔に保つことなどを続けることの大変さに気づいた。

 浮気に溺れた夫は、その自分自身とも決別し、妻とともに過ごし、妻を守ろうする様子が、もはや介護で心身ともに疲弊していく人を見るかのようだった。

 巨大化していく妻のことを記録したりしているところには、夫の愛情なのか、それとも作家としてネタになると思ってのことなのかははかり知れない。作中の大部分で語られる妻の身体のこと、排泄物のことなどは、なんとも言えない気持ちになる。

 けれども、生きているということは、排泄物だってするし、身体の不調だってある。本作品は、綺麗なことだけが純愛ではないことを教えてくれる作品だったように思う。

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