著者にとってデビュー作だという、「宵口怪談 無明」鳴崎朝寝著を読んだ。
本書では、存在するはずのないもの、誰かの知人や友人が行方不明になってしまった妙な話など、気味の悪い話が多々語られている。
「怖いな」と思うならば本書のようなものを読まなければよいのだが、「怖い、怖い」と思いつつも読みたくなるのだから仕方ない。
あとがきでは、著者が怖がりな方だということが記述されていたのも、印象的だった。私も、夜中にトイレに行きたくなって目覚めた時に家族のものではない影があったら、夜道で妙なものに出会ってしまったら、帰宅時にドアを開けたら何かと鉢合わせしないだろうか、などなどキリがないほどに想像を巡らせることがあるから、著者に対してどこか共感を覚えるようだった。
本書では、日常の中のどこかで、もしかすると自分も気づかぬうちに経験しているのかも?と思えなくもないような話がいくつも語られていた。気にするかしないかの違いなのか、見えているのかいないのかだとか、ちょっとした差で変わってしまうことなのかもしれないな、と思った。
私は、誰かに語れるほどの怖い話を持ち合わせていないせいか、「怖い、怖い」と思いながら、どこか楽しんで本書を読んでいた。