なんとなくわかっているつもりのようで、よくわかっていないことというものが多々ある。そのうちの1つだった、“アル中”について知っておきたくなった矢先、文庫化されたことを見聞きして、「アル中ワンダーランド」まんきつ著を読んだ。
本作品は、著者まんきつさんの実話をもとに、コミックエッセイとして描かれている。各エピソードについて、解説つきなのも臨場感が増して良い。
前述のように、今まで見知ったつもりでいたことを、実際の体験談として描かれているものを読むことで、得られるものがある。たとえば、本作品であればアルコール依存症のことで、「飲みたい気持ちを我慢できないのは、アルコール依存症である。」ということを確認できた。
まんきつさんが、とてもコミカルにアルコール依存症に至るまでを描いているけれど、ところどころの描写で心がざわつくようなことがあった。それと同時に、私はまだアルコール依存症ではないけれど、そうならないように気をつけよう、と思う自制心みたいなものも芽生えた。
本作品を読むことで、アルコール依存症になってしまうと、一生つきあう病気であることを知った。“依存症”というものが、心身から容易に引き剝がせないことを認め、向き合っていくしかないのだ。生きづらさであったり、孤独やさみしさが引き金となって、なにかに依存せずにはいられない状況というものも、本作品を読んで想像してみたりもした。
また、巻末に掲載されている、まんきつさんと吉本ばななさんの対談を読むと、アルコール依存症が決して他人事ではないことも、よくわかった。「自分は大丈夫。」と思って通り過ぎることなく、本書を読んで良かった。