旅先、入院した病院、引っ越しやタクシーなどで縁があった場所での思い出について綴られた紀行エッセイ、「縁もゆかりもあったのだ」こだま著を読んだ。
本書には20編ほどの紀行エッセイが収録されており、そのうちのいくつかは書き下ろし、とのことだ。
いざ本書を読み始めると、こんなことってあるんだ、と思うようなこだまさんが体験したいくつものエピソードに遭遇する。ただの紀行エッセイではないのだ。それに、旅することが必ずしもどこかに出かけることばかりではない、ということも記されていたように思う。
いつか、そのうち。そう思っているうちに、大事な場所はなくなる。この数年の間にもお気に入りの書店や喫茶店が惜しまれながら店を畳んだ。
「縁もゆかりもあったのだ」ー凍える夜の鍋焼きうどんーより一部抜粋
こだまさんの縁ある場所についての話は、本書を読む者にとっても、ところどころで重なる想いなどがあることだろう。私にも、いくつかあった。
例えば、なんでもスマホさえあれば、あるいはパソコンで調べられる時代なのに、わざわざハンドブックを購入した、というようなエピソードがあり、時々私も敢えてそうしたくなることを思い出させられた。
このほかにも、知人、家族、その場限りの人々との思い出で、驚くようなことも、笑いがこみ上げてくるようなこともあり、どれもかけがえのないものであり、本書のタイトルに繋がることであろうことが窺えた。
本書を読み終えると、日常の些細なこと、誰かとの腹立たしい出来事ですら、どこかユーモラスに語られていて、鬱々とした日々の中で良い気分転換になった。