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【読書感想】などらきの首

読書
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 澤村伊智さんの比嘉シリーズを好んで読んでいるつもりでも、1冊だけ読んでいないままなのは少しばかり落ち着かないな、と思っていた。ここのところ、漫画ばかり読んでいたし、小説を読みたくなってきたような気もして、「などらきの首」を読んだ。


 本書は、表題作「などらきの首」を含む、数作品が収録された短編集だ。どの作品にも、比嘉姉妹の誰か、あるいは比嘉姉妹シリーズには欠かせない人物が登場する。

 たとえば、ある作品では、誰もが幼い頃に口にしたことがあるであろう”おまじない”のことが記述されている。その光景を自分なりに想像しながら読んでいくと、本当にこういうことって、あるのかもしれない、と少しばかり信じてしまいそうになる。怖い話というものは、自分の日常のどこかに共通点を見出すほどに、もしかしたらと思ってしまうから怖いのかもしれない。

 わたしはその”みんな”には入っていない。この人には意味がわからないだろう。

“みんな”とは繋がりが切れている人間がいることを、この人はきっと理解できないだろう。

「などらきの首」–学校は死の匂い–より抜粋

 この引用は、比嘉姉妹のうちの一人が、通っている小学校に来た教育実習生との会話においての胸の内だ。こういった思いを抱くことは、ある人にとっては子どもの頃に限ったことではなく、大人になっても続くのだ。けれども、ここで綴られていることは他の出来事にも紐づけられており、それを理解できず思いつきもしない人もいるという現実がそこかしこに転がっていることが想像され、ある種の残酷さが際立つようだった。

 澤村伊智さんの作品は、怪異の怖さはもちろんのこと、生きている人間の怖さなども描写されているから、それぞれの面から楽しめる。作品の終わり方も、さわやかに締めくくられるものもあれば、なんとも言えない後味の悪いようなものもある。比嘉姉妹シリーズは、ホラーなのだから、それはそれで良い。

 「などらきの首」を読んでみて、表題作はもちろんのこと、他の作品もそれぞれの怪異による何か、を想像を巡らせつつ文字を追い、存分に楽しめた。