ミステリー作品を読みたくなって何か気に入る作品がないものかと探していたところ、カバーイラストが目に留まり、試し読みをしたら続きが気になったことから、「そして誰も死ななかった」白井智之著を読むことにした。
「そして誰も死ななかった」は、覆面作家である天城菖蒲からの招待を受け、5人の推理作家が孤島に建つ館へ訪れる。
5人の推理作家の共通点として、ある女性とそれぞれが関係したことが判明するものの、その女性は9年前に死亡していることから、なぜこのタイミングで覆面作家によって集められたのかが疑問となる。
しばらくすると、推理作家たちが次々と殺されていくことで、事件が進んでいく。
本作品では、主に大亦牛男の視点での描写が中心となり、彼の生い立ちに繋がることだとか、前述の女性とのことも描かれている。
序盤では、大亦牛男がとんでもない男で、ひょんなことをきっかけにした思いつきで推理作家になってしまったことからも、孤島での活躍は期待できないものと思っていた。
けれども、終盤にかけての大亦牛男は、まさに推理作家そのものだった。孤島への招待を機に、彼のもともと持っていたであろう才能が発露されたようだった。
また、大亦牛男だけではなく、その他4名の推理作家たちとの推理合戦のようなものも、おもしろかった。
「そして誰も死ななかった」を読んでみたら、真犯人を見つける為の推理のほか、真犯人から身を守る為の推理が誰かによって述べられることがある、というシーンも楽しめた。
ただ、作中での推理作家たちの死に様が結構グロテスクで、その後の展開でも登場人物が推理する度、それ以外でもその様子が語られた。
今思えば、冒頭で大亦牛男が某居酒屋で食べていたものの描写からしてジビエとしてもゲテモノ寄りだったことからも、読むごとにそのグロテスクさには慣れるほかないのかもしれない。