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【読書感想】ぬばたまの黒女

読書
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 前作「ナキメサマ」を少し前に読み、シリーズものということで、続きが気になっていたことから、「ぬばたまの黒女」阿泉来堂著を読んだ。

 「ナキメサマ」についての感想は、こちら↓

 さて、それでは「ぬばたまの黒女」について、語っていきたい。先にシリーズもの、と紹介したが、前作についての語りはなく、これだけを単独で読んだとしても特に問題はないだろう。ただ、ホラー作家であり怪異譚蒐集家でもある那々木悠志郎が登場することから、彼のキャラクターをより楽しむには、前作も併せて読んでおくと安心かもしれない。


 本作品では、井邑陽介が、十数年ぶりに近隣の町に吸収合併されることとなった生まれ故郷を訪れることから始まる。井邑陽介が、故郷を訪れたのは旧友からの誘いもあってのことで、旧友達との再会を懐かしみつつも、村のシンボルのようだった神社が焼失し、彼が特別な思いを抱いていた少女が亡くなったことも知ったことで、いろんな思いが交錯していく。

 また同時に、井邑陽介が村を訪れる少し前に新しく建てた神社で不審死を遂げた人がいることなどを語らっていたら、那々木悠志郎と出会い、行動をともにすることとなった。さらに、彼らが村に滞在中の深夜、奇妙なものを見かけ、事件が次々と起こる。

 前作を読んでいる時、私は少しだけ那々木悠志郎のことを苦手だと思った。しかし、今回は、那々木悠志郎が井邑陽介と良いコンビのような掛け合いがあり、印象が変化した。

 この村で起きた事件の元を辿っていくことで、井邑陽介が父と共に村を出ていくことになったきっかけなどにも繋がるほか、村のシンボルだった神社が焼失した真相やその神社が信仰していたものなどが明らかにもなる。それがタイトルにも繋がるものなのだけれど、生まれ育った場所で、こういうものだと言われ信じてきたものが、あることをきっかけに穢らわしいものになるのは、仕方がないことと諦められるものばかりではない、と思った。

 小さな村で起きた、とんでもない事件の数々の真相が明らかになった後、井邑陽介に那々木悠志郎が告げた言葉から、更なる事実が出てきたのは驚いて理解するまで少々時間がかかった。そして、那々木悠志郎にはまだ語られていない何かがありそうだな、などと考えながら、「ぬばたまの黒女」を読み終えた。