Twitterで誰かのツイートを見かけたことがきっかけで、「梟の一族」福田和代著を読んだ。
本作品は、”梟”と呼ばれる一族の末裔・榊史奈が暮らす集落が、ある夜、何者かによって襲撃されたところから始まる。榊史奈は、一族の長で”ツキ”と呼ばれる祖母の指示で、風穴へと逃げ、その後、集落の者が1名死亡し、その他の人々が行方不明となったことが判明する。
なぜ祖母達が行方不明になったのか、何のために集落が襲撃されたのか、ということを探る為、榊史奈は昔から祖母に言われていた避難場所へと向かい、梟の言い伝えを知る人達に助けられる。
榊史奈は、身を隠しながら梟を襲撃した敵を探すうち、集落を出ていった人々のその後を知ったり、再会したりもするけれど、それと同時に緊張感ある状況が次々と起こる。とはいえ、幼い頃から祖母に教え込まれたことや梟の持つ身体能力で、榊史奈は真相へと近づいていく。
高校に入学したばかり、という年齢を感じさせないような榊史奈の落ち着き、洞察力や思考などのほか、睡眠を取ることがなく、優れた身体能力も持っているけれど、目立ってはいけないし、常に誰かを疑えというような祖母のもとで暮らしてきた、というのは、何百年と続く忍者の一族の末裔であることを受け入れ、祖母のことを尊敬もしているような描写もあり、当事者にしかわからない心情が示唆されているようだった。
また、榊史奈の視点での描写以外に、ある刑事の視点、スポーツ記者の視点でも、梟の集落に関することが記述されているのも、事件の真相に向かっていくにつれ、重なるところが出てくるなどして、良かった。
「梟の一族」を読んでみたら、こういう一族が現代にもどこかで暮らしているかもしれない、と思わないでもないストーリーが描かれていた。梟の人々の体質に関することのほか、一族の掟に関する非常にも思える描写もあったけれど、そういった過去にあったことが再び起きないように、と未来に約束するようなラストが展開されていたのが、印象的だった。