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【読書感想】火のないところに煙は

読書
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 ミステリー作品を読みたいな、と思い、いくつかのサイトを行ったり来たりしていたところ、おすすめ作品一覧に表示され、あらすじ紹介をざっと読んでみたらおもしろそうだな、と思い、「火のないところに煙は」芦沢央著を読んだ。


 「火のないところに煙は」は、「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」という依頼があり、作家である「私」はずっと忘れられず、かと言って向き合ってこなかった、かつての出来事について思い出し、この機会にこの話を書いてみることにしたことから始まる連作短編集だ。本書は、モキュメンタリーという手法で語られ、どこからどこまでが創作なのか、それとも現実なのか、そんなことを考えながらも読み進めずにはいられなくなる。

 本書は、第1話から第5話までが小説新潮に掲載されていたことからも、第1話を読んだ人から別の怪談話を聞き、第2話を読んだ別の人から怪談話を語られ、といった具合に怪談話から別の怪談話が作家の元に集まっていることが、各話を読むごとにわかる。その話それぞれに繋がりがあるかどうかは、最終話まで読んだ者だけの楽しみにしておきたい。

 こういった怪談話が別の怪談話が集まってくる、というのは、これまでに読んだことがある実話怪談の語り手のことを思い返してみると、怪談話を蒐集されている方には珍しい話ではないかもしれない。けれども、ひょんなことがきっかけで怪談を執筆することになった作家からすれば、他人事から自分事になるわけだから、ヒヤリとすることもあるだろう。こういったところも、本書が創作なのか実話なのか、と思いを巡らせる部分となって楽しめた。

 「火のないところに煙は」を読んでみたら、モキュメンタリーという手法ということもあり、実話怪談を読んでいるような感覚で楽しめる連作短編集だった。また、作家である私が気づかなかった点を指摘し、真相に辿りつくよう助言する登場人物の存在がいるのも、ミステリーの要素を含んでいるようで良かった。