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【読書感想】ずっと、おしまいの地

読書
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 「おしまいの地」シリーズ3作目であり、完結編となる「ずっと、おしまいの地」こだま著を読んだ。

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 「ずっと、おしまいの地」は、こだまさんが小学校3・4年生だった頃に担任だった先生の訃報を知り、通夜へ向かった話から始まる。

 長いあいだ何をやっていたんだ。なぜ幸せにしてもらおうと考えていたんだろう。

好きなように生きて自分で自分を幸せにすることができたのに。

「ずっと、おしまいの地」本文より抜粋

 これは、こだまさんが、大学生の頃からずっと自分の誕生日を旦那さんに言い出せずにいた話の中での気づきだ。自分にとって、一番近しい人にこそ言い出せなかったり言いそびれたりして、そのまま自分に要らぬモヤモヤをもたらすことって大なり小なりあるよな、と思った。そんな時に限って、「私の気も知らずに」なんて独りよがりな気持ちになって、後々そんな自分に呆れたりすることが、私にも身に覚えがあった。

 話は変わり、こだまさんのエッセイでは、転々と引越しをしていく様子が語られているが、本書では、引越しを前に近隣に暮らす読者の女性と遊んだ話が印象的だった。こだまさんの日常と非日常の隙間のようなところに、その女性が関わるようになったことで、こだまさんご自身がその変化を淡々と語るところが良かった。こだまさんが、その女性がよく立ち寄るという喫茶店に一緒に行った際、その女性と喫茶店の客たちとのやりとりを見て、やや嫉妬するこだまさんは、私が勝手に見知ったこだまさんらしさが垣間見えるようで、どこかホッとした。

 また、本書ではエッセイの合間に、2021年と2022年の日記も収録されている。何かのテーマに沿って語られているエッセイを読むのも好きだけれど、日常のことだったり、自分の内面のことなどが詰め込まれた日記を読むのも良い。

 極端な行動に走る父と、どこか他人事のように語る母。私はその両方の嫌なところを受け継いでいる。

「ずっと、おしまいの地」本文より抜粋

 これは、こだまさんがご両親の様子を見に実家へ行ったある日、実家で見た光景、ご両親とのやりとりから語られていることだ。この部分を読み、私にも両親から受け継いでいる、できることなら受け継ぎたくなかった部分に気づくことが増えたことに重なった。目を背けたくなるようなこと、わざわざ誰かに口にしないことを文章だからこそ、見知らぬ誰かと共有できることもあるのだ、と気づかせてくれる。

 「ずっと、おしまいの地」を読んでみたら、シリーズ完結にふさわしい変化のようなものがエピソードのそこかしこにあった。たとえば、こだまさんのある日の日記で「最近の私は全然人の言うことを聞かないから、ようやく対等になれるかもしれない。」という記述があり、この文章を見つけた時、心が救われるような気持ちになった。