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【読書感想】虎のたましい人魚の涙

読書
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 エッセイ集「虎のたましい人魚の涙」くどうれいん著を読んだ。本書は、文芸誌に連載されているエッセイをまとめ、書き下ろしエッセイ1編を加え、書籍化されたものだ。


 まずは、タイトルにもなっている「虎のたましい人魚の涙」という1編のエッセイは、琥珀にまつわるエピソードが描かれている。このエピソードに登場する久慈琥珀は、約9,000年前のものだそうで、くどうれいんさんと琥珀のお店の人のやりとりなどからも、久慈琥珀への興味が湧いた。興味ついでに、久慈琥珀のウェブサイトを覗いてみたら、琥珀の歴史などにも触れることができて、良かった。

 わたしはよくはかりかたを間違ってとても嫌われてしまったり、目の前からいなくなってしまったりする。仲良くしたい人ほどはかろうとしてしまいそういう悲しいすれ違いをする。結局最後までわたしの何がその人を傷つけたり怒らせてしまったのかわからないこともある。

「虎のたましい人魚の涙」本文より抜粋

 誰かとの関わり方などについて、私も似たようなことがこれまでに幾度もあり、その度に寂しくなったり、何かを後悔するようにそれまでのことを振り返ったりした。誰かが私と離れていく理由は、当たり前ではあるが教えてもらえないことがほとんどで知りようがないし、別の誰かから又聞きすることほど後味の悪いものはないのだ。だから、この人は私と疎遠になるな、と思うような前触れを感じた時、その人のことを考え過ぎず、潔く諦めることができたら良いな、と思う。

 本書ではこのほかにも、幼い頃から今日に至るまでの日常のエピソードが、見たもの触れたもの、その時々の感情までも鮮やかに記憶されている話があったりして、やや驚きつつも、くどうれいんさんの正直さが伝わってくるような内容に、こちらの感情も揺さぶられるようだった。

 「虎のたましい人魚の涙」を読んでみたら、くどうれいんさんが会社員として働きながら作家として歌人として活動されている日常が、鮮やかな感情とともに描かれていた。