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【読書感想】オメガ城の惨劇

読書
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 ”「F」の衝撃、再び。”という紹介文を目にし、そのまま予約をして発売を楽しみにしていた「オメガ城の惨劇」森博嗣著を読んだ。


 「オメガ城の惨劇」は、孤島にあるオメガ城へと招待された6人の天才、1人の記者、その中にはサイカワ・ソウヘイも含まれていた。オメガ城への招待状には、マガタ・シキ名義の署名があったものの、オメガ城へ到着すると城の執事すら主催者の顔を知らなかった。オメガ城への招待状を7人に送りつけたのはマガタ・シキではない可能性が高まったけれども、招待された7人は思わぬゲストの登場で楽しい晩餐を過ごした。

 楽しい晩餐の後、深夜にいくつかの叫び声を聞いた記者のミヤチ・ノエミが部屋から出ると、同じく叫び声を聞きつけたサイカワ・ソウヘイも部屋から出てきて、その後、執事とともに各部屋を訪ねてみると、いくつかの惨劇が起きたことを知ったのだった。

 本作品では、記者のミヤチ・ノエミの視点で語られている。ミヤチ・ノエミから見ると、サイカワ・ソウヘイがどういう人物となるのかなどはもちろんのこと、ミヤチ・ノエミとサイカワ・ソウヘイの会話なども、どこか新鮮な印象だった。

「個人的な仕事はまだ必要だけれど、集団の活動は、ほとんど意味がなくなっている。でも、都市に集中して生きている人間の生態が変化するのには、百年くらいかるんじゃないかな」

「オメガ城の惨劇」本文より抜粋

 これは、第3章の終盤でのミヤチ・ノエミとサイカワ・ソウヘイの会話で、この抜粋箇所以外にも、この前後の会話が、この数年での世の中の移り変わりにも重なるようで、印象に残った言葉でもあった。

 私は、森博嗣作品のいくつかのシリーズを読んできたつもりでいたけれど、読んだ作品についての記憶が抜け落ちていることが多く、何も疑わず良かれ悪かれ素直に読んでしまったことで、最後の最後まで楽しめた。どのシリーズでも、登場人物の個性などを記憶していなければ、すっかり騙されてしまうし、この人物はこういう人だったかも、などと受け入れてしまう。

 「オメガ城の惨劇」を読んでみたら、森博嗣先生による読者へのサービスとも受け取れるような作品だった。「もしかして」と思うようなことがエピローグで暴露されるのも、今までの作品を読み返したくなるような仕掛けになっていた。