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【読書感想】さえづちの眼

読書
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 比嘉姉妹シリーズ初の中篇集、「さえづちの眼」澤村伊智著を読んだ。


 本書では、表題作「さえづちの眼」のほか、「母と」、「あの日の光は今も」の3編が収録されている。収録されている3作品は、いずれも母親の存在が印象的だった。

 それではここからは、「母と」について述べていきたい。この作品では、”鎌田ハウス”という民間の構成施設でのことが描かれている。作品の終盤で、この鎌田ハウスに仲間入りした人物についての話を読んだ時、「エスター」という映画を思い出した。この作品と映画の内容において、ある人物についての思い込みだとかが、そうさせたのかもしれない。

 次に、「あの日の光は今も」について、述べていきたい。この作品では、母親と旅館を営む男性が、少年時代に友人とともに目撃したUFOのことが事件として、その後思わぬ事態を招き現在に至っている、というような話が描かれていた。

 さて、表題作の「さえづちの眼」について、語っていきたい。本作品の冒頭では、架守(かがみ)家に住み込みで働くことになった家政婦が、家政婦紹介所の所長宛に書いた手紙の内容として、この家の人々のことや出来事などが綴られていく。中盤からは、この家政婦の手紙にも登場していた人物の視点で、その家政婦がいた時期から数十年後の現在のことが語られる。

 架守家では不幸が続き、どうにかしたいと思った当主が霊能者に依頼したところ、その霊能者が比嘉琴子だった。比嘉琴子が架守家を訪れ、淡々と語り、架守家を祟った怪異の正体などが順に明らかになっていく様子が、痛快でもあった。

 「さえづちの眼」を読んでみたら、それぞれの作品で母と子のこと、登場人物たちが遭遇した怪異の不気味さが描かれていて、叙述トリックにまんまと引っかかることもあり、楽しめた。