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【読書感想】せいいっぱいの悪口

読書
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 Twitterで著者のアカウントを見かけたことがきっかけで、ずっと気になっていた「せいいっぱいの悪口」堀静香著を読んだ。

 本書は、歌人や書き手などで活躍される堀静香さんのエッセイで、ご本人のウェブショップや取扱店でのみ購入できるスタイルの本である。

 エッセイの中で、時折、詩歌を引用しているところも、情緒があって良い。

 著者は、前述のように書き手などをするほか、非常勤職員として某地方の学校で教鞭を取ってらっしゃることから、教職員から見た学生の姿も綴られている。著者が教職を選んだことも、本書で少しばかり語られている。

 本書での著者の言葉を追っていると、こういった大人に出会うことができた生徒たちが、少し羨ましい。私は、なにか気にかけてくれるような大人に出会うことなく、学生時代を過ごしてきたから、その頃のことを思い出してどこか寂しくなった。

事故が怖い。病気が怖い。何が起こるかわからないから五年後が怖い。二〇年後はもっと怖い。今がずっといい。でも今が信じられない。なのに今しかない。

「せいいっぱいの悪口」本文より抜粋

 ところで、本書では半年後の自分が健康であるかどうか、生きているかどうかなどの確証が持てないのに予定を入れられない、というような意味合いの描写があった。似たような気持ちを抱くことがあるので、自分だけがそういったどこか不謹慎で心配性な性質を持っているわけではないことに安堵した。

 このほかにも、同じような時期に結婚した人々が、次々と出産し育児をしていることを知った時の著者の思いなど、「なぜ」「どうして」と自問自答してしまいがちなことが綴られていて、ついつい自分事と重ね合わせたエピソードがあった。

 コンパクトな1冊にギュッと詰め込まれた日常は、著者の言葉で彩られ、とても力強いものになっている。自分を俯瞰することは、恥ずかしいことも辛いこともあるけれど、言葉にして見ず知らずの者に読まれることを恐れない。そういった人は、大変魅力的である。