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【読書感想】パライソのどん底

読書
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 初めて作品情報を見た時、BL系ホラーとはどんな感じなのだろう、と気になりつつ、試し読みなどに目を通すのも我慢して、発売日を待ち遠しく思っていた「パライソのどん底」芦花公園著を読んだ。


 「パライソのどん底」は、父方の祖父が体調を崩したことをきっかけに両親と共に田舎に引越してきた相馬律が、田舎の暮らしに辟易として過ごしていた高校一年の秋、高遠瑠樺が転校してきたことから始まる。

 高遠瑠樺は”ある理由”から、いないものとして扱われ、高遠瑠樺に気に入られた相馬律も同様の扱いを受けるようになる。まわりからどんな風に扱われようとも、高遠瑠樺の美しさに魅入られた相馬律は、段々とおかしくなっていく。

 本作品は、きっと誰もが一度は見聞きしたことがあるであろう童話に出てくる”あるもの”が根底にあることが途中で明らかになる。そのモチーフとなっているものが、もたらすものに取り憑かれてしまった村人、忌子達のことが語られていくにつれ、それぞれの怖さ、不気味さが増す。

 ところどころで、ある人物が「灼ける」と言う台詞があるのだが、その言葉の表すものが、性的な意味合いばかりではなく、そのモチーフになっているものと紐付いた途端、合点がいった。

 「パライソのどん底」を読んでみたら、ある村の住人が隠す秘密がどんなものなのかを知った時の不気味さ、美しいものに魅入られることが幸福ばかりではないことの怖さなどが、結末に至るまで描かれていた。また、私はこれまでBLは漫画でしか読んだことがなく、小説では本作品が初めてだったものの、ホラーが絡んでいたことで一層のこと楽しめた。