角田光代さんの愛猫トトを迎え入れるきっかけから、現在に至るまでを綴られたエッセイ「今日も一日きみを見てた」を読んだ。
私は猫を飼ったことがないけれど、実家で犬を飼っていることから、自宅にペットがいる生活ということであれば置き換えて考えられそうだな、と思いながら本書を読み始めた。
まずは、角田光代さんが愛猫トトを飼うこととなるきっかけは、漫画家・西原理恵子さんとの出会いだった。初対面で西原理恵子さんとの会話から、もし西原理恵子さん宅の猫が子猫を産んだら七番目の子猫を角田光代さんに譲る、という約束をしてしまった、ということに驚いた。
それまでに猫や犬などを飼ったことがない人が、その後ペットを飼い始めるきっかけとしては起こり得る話だとは思う。私の実家で飼っている犬は、私が以前働いていた会社で出会った人が飼っている犬の子犬を譲っていただいたから、角田さんのきっかけには親近感を覚えた。
角田さんと夫、トトとの暮らしが始まると、トトの猫らしからぬ姿に驚き、笑い、安らぐ角田さんご夫妻の姿が文章から溢れ出していた。
うちの猫はわがままで困る、と言う人はそのわがままさ加減を愛している。うちの猫は猫かっていうくらい運動神経が鈍い、と言う人は、その鈍さを誇りに思っていたりする。他人にはわからないだろうピンポイントな愛が、動物を飼う人たちにはあるようなのだ。
「今日も一日きみを見てた」本文より抜粋
角田さんのトトとの暮らしからの気づきは、共感するものがいくつもあった。角田さんが本文でも語ってらっしゃったが、西原理恵子さんとお会いする頃、角田さんは私生活でとても辛いことが続いて心がすさんでいたそうだ。それを西原理恵子さんは、初対面で見抜いて角田さんに子猫を託す話を持ちかけたように思う、というようなことが述べられていた。
動物と暮らす、ということを私は犬と暮らすことで、角田さんと似たような経験があったことを思い出した。犬も猫も、かわいい。私は、地域猫や店の猫などとしか触れ合ったことがないが、猫に心惹かれるのもわかるような気がしている。
本書を読むことで、猫に限らず、動物と暮らしている人、あるいは暮らしたことがある人にとって、心当たりのある日常を角田光代さんの日々から垣間見ることができる。これから、動物と暮らしたい、と思っている人にとっても、今後が楽しみになることを見つけられるかと思う。