連作短編集「ワン・モア」桜木紫乃著を読んだ。
本書は、死、再生、愛がテーマと言えそうな短編が連作となっている。前の短編では主人公だった人物が、別の短編では登場人物の1人となっているから、連作作品はおもしろい。
登場人物たちの中で中心人物たちが、高校の同級生であり医療従事者でもある。そのうちの1人が、ある日、余命宣告をされたことで周囲の生活がガラリと変化する。
医療従事者が抱える問題を少々語りつつも、大半は余命宣告をされた仲間を支えるような物語として進んでいく。
合間には、中心人物が勤務する病院で診療を受ける等々の縁がある人物の物語も描かれているのも、良かった。
収録されている作品は、どれも、誰かにとっての愛が描写されている短編だからこそ、もどかしく思うものもあった。
一見つながりのあるようでないようでもある物語たちは、最後の物語でつながりを見せる。涙がこぼれそうなストーリーに進んでいくのかと思いきや、そういうものでもない。タイトルのワン・モアが意味するものを見つけられそうな人々のつながりと、その他諸々を楽しめる作品だった。