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【読書感想】コゴロシムラ

読書
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 なんとなくTwitterを眺めていたところ、ふと目に留まったカバーがきっかけで「コゴロシムラ」木原音瀬著を読んだ。

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コゴロシムラ (講談社文庫) [ 木原 音瀬 ]
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 本作品は、カメラマンの仁科が雑誌の取材で訪れた、とある土地で取材後に宿泊先へ向かう山道で道に迷い、悪天候になったことから同行していたライターと共に古い民家に住まう老婆の好意で、そこに泊まらせてもらったことから始まる。

 その民家で一夜を過ごすことになった仁科は、いくつかの奇妙な体験をし、民家のある集落を”コゴロシムラ”と呼ばれていることを知るも、翌日東京へと戻った。

 しばらくすると、ある病院から仁科に電話がかかってきて、1人の青年と出会ったことから、少し前に取材で訪れた民家での出来事などを思い出す。その青年は、新(あらた)という名前で、生まれつき両腕が無く、義務教育を受けた様子もないけれど、男性でも女性でもないような美しい人で、魅力的なのだった。

 新の身元が不明であることから、ひとまず新の身元保証人になった仁科は、仁科が住むアパートの部屋で共に暮らすようになり、新は今までの暮らしとは異なる東京の暮らしを少しずつ知り、仁科は新が苦手なことなどを理解しようとする。それと並行して、仁科は新の親のこと、新が一緒に暮らしていたおじちゃん、兄のことを調べていく。

 本作品を読んでみると、それなりにホラーあるいは、ミステリーとしてのストーリーがありつつも、気づけば仁科と新の物語が主であるようだった。その様子が、BLだとかブロマンス作品を思わせるような気がしつつも、人と人の関係が深まっていく様子がとても良かった。

 合間にイラストが添えられているわけではないのに、脳内では新がワンピースを着てはしゃぐ姿が再生されたり、仁科が新の世話を焼いている光景が思い浮かんでくるほど、私は、本作品を夢中で読んだ。

 「コゴロシムラ」を読んでみたら、おどろおどろしいホラー作品を期待したものの、新の親のことや一緒に暮らしていた人々のこと、コゴロシムラと呼ばれた土地で起きたことが明かされるミステリー要素がありつつも、いつの間にか仁科と新の物語になっていくようなストーリーが、誰かにとっての当たり前や常識が、新の存在によって変化するような気配を感じさせるところも魅力的だった。