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【読書感想】異端の祝祭

読書
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 芦花公園さんの前作、「ほねがらみ」がとても好きなテイストだったことから、著者にとって2作目となる「異端の祝祭」を読んだ。

 前作「ほねがらみ」についての感想は、こちら↓

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 さて、本作品「異端の祝祭」について、語る。
就活浪人生となった島本笑美は、幼い頃から生きている人間とそうではないものの区別がつかないことも、就活に関係しているのではないか、と思っていた。そんななか、ダメ元で応募したモリヤ食品の面接で”ヤン”と名乗る青年と出会い、内定を得て研修らしきものに参加するようになった。

 まずは、島本笑美という登場人物が就活が思うようにいかず、50社以上応募しても内定を得られずにいる状況が、かつての自分と重なるようだった。私も、ダメ元で応募した企業に就職することとなったけれども、それはまた別の話。

 話を戻して、本作品では島本笑美が就職後、連絡を取れなくなったことから彼女の兄が、心霊専門の佐々木事務所に彼女を取り戻すことを依頼したことから、佐々木事務所の佐々木と青山が調査し始める。

 本作品では、怪異がもたらす怖さというよりも、生きた人間が誰かを洗脳することであったり、言葉で説明のしようがない能力を持っている人がもたらすものの怖さが描写されている。

 宗教がセミナーになろうと、役割はきっと同じだ。心の拠り所だ。しかし、あくまで拠り所であって、全てを預けてはいけない。普通の人はそれが分かっているが、ハマっている人は違う。
信じているものが、そのままその人のアイデンティティになってしまっている。

「異端の祝祭」本文より抜粋

 上記の抜粋は、私自身への戒めにもなり得る、と思い、記した。私は、これまでも何かに全てを預けてきたことはないはずだけれど、これからどうなるかはわからないし、そうであってはならない。これは、私に限らず言えることだけれども。

 誰かからの支配や監視、あるいは都合が良すぎる甘い言葉で誘惑されるなど、誰かが心の隙間に入り込もうとしてくることは少なからずある。本作品では、島本笑美に限らず、親や身近な大人から子供らしさを奪うような支配や監視などを経験してきた人についての描写があり、心の拠り所がどちらに傾くかはその人次第であることが示唆されているようでもあった。

 本作品を読んでみて、前作「ほねがらみ」でも登場した人物がいることを見つけ、より一層のこと、ストーリーを楽しめた。本作品のみでも充分に楽しめるけれど、併せて読むことをおすすめしたい。