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【読書感想】私の盲端

読書
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 先日、Twitterを眺めている時、ふとフォローしている方の読み終えた本のツイートが目に留まった。ツイート内容、カバーに使用されている写真、タイトル、どれもが妙に気になって、私も読もうと決めるまでそんなに時間がかからなかった。

 それが、この「私の盲端」朝比奈秋著だ。

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私の盲端【電子書籍】[ 朝比奈秋 ]
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 ウェブサイトなどで、本書の紹介文を読んでみたら、著者は現役の医師で、本書がデビュー作だそう。ちなみに、本書には表題作のほか、第7回林芙美子賞受賞作「塩の道」も収録されている。

 さて、それでは「私の盲端」について語ってみたい。

 「私の盲端」の主人公は、大学生活のほか、アルバイトをしている女性だ。ある日、アルバイト先の飲食店で倒れ、病院に運ばれた後、意識を取り戻した時には人工肛門が付き、それまでの日々とは異なる日常が始まる。

 主人公は退院後、病院の看護師から紹介された自助団体の体験談を話す集まりに1度だけ参加し、その後、SNSを経由して知った、少人数のチャットグループに入り、匿名で詮索し合わない関係を気に入ったところが、その当時の主人公の気持ちが表れているようだった。

 とは言え、そのチャットグループでは、再び手術をして人工肛門ではなくなると、チャットグループを卒業していく、ということを主人公は知るし、音沙汰なく突然チャットグループから消える人もいて、同じ境遇のように思えてそうではない場所であるところに気持ちが揺さぶられた。

 私は、オストメイト対応の多目的トイレについて、随分前から知っていた。というのも、著名人が、その方自身が人工肛門だった体験をインタビューで答えているのを何かで見た記憶があり、そこからちょっと調べたことがあった、というだけのことだ。

 オストメイト対応の多目的トイレについて知っていたとしても、人工肛門が一時的なものである人もいれば、永久的に人工肛門のままの人もいる、ということは知らなかったし、肛門からの排泄が無くなったことで感じる身体の不調もある、ということも、本作品を読むまでは想像すらしなかった。

 また、主人公が大学の友人、アルバイト先の親しい子にも、人工肛門であることを告げられず、就職活動ではなかなか内定が出ない、という状況で、大学の友人が何気なく「障がい者枠採用」について口にする描写があった。この時、主人公が障がい者になったばかりだけれど、これからもずっと胸の窮屈さが続くのか、と悲観的な気持ちが描かれる。

 一方で、主人公はとある場所のオストメイト対応の多目的トイレで、同じく人工肛門の男性と出会い、その後、大学のキャンパス内で再会する。この男性との出会いで主人公の考え方の変化、気づきがあったりする。その男性が、人工肛門での排泄を完全にコントロールしていることを主人公に見せる描写は、その後のストーリーでの主人公の内面の変化に影響していた。

 「私の盲端」を読んでみたら、今まで出会った人の中にも、一見ではわからない障がいを持った人がいたかもしれないし、これから出会う人の中にもいるかもしれない。それは、自分かもしれない。誰かの障がいについて、何も知らないよりは少しでも知っている方が、良いかもしれない。こういうことしか言えないけれど、考えること、知ろうとする気持ち、自分でできる範囲での思いやりが大切だと思っている。

 

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