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【読書感想】法廷遊戯

読書
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 よく利用する書店のオンラインストアで、物色している時におすすめの本で目にしたのか、きっかけはあまり思い出せないが、装丁が目に留まったこと、タイトルも気になったことから、「法廷遊戯」五十嵐律人著を読んだ。

 この「法廷遊戯」は、第62回メフィスト賞を受賞作であり、著者の五十嵐律人さんは、森博嗣さんに憧れていた司法修習生でもあるそうだ。こういうことを知ると、作品を読むのが楽しみになった。

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 本作品は、法律家を目指す者達が通うロースクールで、ある日、久我清義の過去に関する文書が、同級生達にばら撒かられる。これに関して、久我清義は見過ごすことをせず、無辜ゲームの開廷を要求した。無辜ゲーム、というのは、このロースクール内で行われている模擬裁判のことで、詳細はぜひ、本作品を読んでみて欲しい。

 久我清義の過去には、ロースクールの同級生でもある織本美鈴も関わっており、彼女の元にも過去に関することで、不可解な嫌がらせが次々と起こる。久我清義は、これらのことを同級生で天才とも呼ばれる結城馨に相談したことで、犯人探しの糸口を掴んだようなヒントを得るものの、真犯人には辿り着けないまま、ロースクールの卒業を迎え、司法試験の受験となる。

 ロースクール卒業後のことを語ってしまうと、ネタバレでしかないので、ここからは差し支えがない程度のことを記していく。

 久我清義と織本美鈴の過去は、決して褒められるようなことではない。けれども、進学を諦められない、という気持ちは、わかるような気がする。私にも、進学に関して似たような気持ちを抱いたことがあり、未だにコンプレックスのようなものとして心に残り続けている。

 彼らの犯した罪は、変えられもしないし、関わった人々にも記憶が残るけれども、そうした過去がきっかけで久我清義は法律家を目指したのだし、未来は自分次第でいくらでも変えられるようにも思える。

 第一部ではロースクールでの出来事、無辜ゲーム、事件を描き、第二部では現実での法廷のことが描かれる。読み進めるにつれ、あの時のあのことが、今のそれに繋がるのか、という驚きなどがあった。

 「法廷遊戯」を読んでみたら、専門用語が語られることもあるけれど、終始わかりやすく説明もあり、裁判制度のことなどを改めて知る機会にもなった。終盤に近づいても、これで終わり、なんてことではなく、いくつもの仕掛けが展開され、刺激的な作品だった。

 最後に、余談ではあるが、なんとなく気になってリンドウの花言葉を調べてみたら、読み終えた余韻があるからこそ、その意味合いも含めて、こういうところまで緻密だな、と思った。