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【読書感想】氷の致死量

読書
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 ”新たなるシリアルキラー・サスペンスの金字塔”という紹介文を見かけ、気になったところから「氷の致死量」櫛木理宇著を読んだ。

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氷の致死量【電子書籍】[ 櫛木 理宇 ]
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 「氷の致死量」は、私立ヨアキム学院中等部に赴任した英語教師・鹿原十和子は、自分が似ていると言われた、戸川更紗という女性教師が14年前にこの学院で何者かに殺された事件に興味を持つことから始まる。

 十和子は事件について何か知ることができたら、と思いながらも、学院での生活に馴染もうとしていく。その一方で、鹿原十和子は自分の性的指向を隠し、見合い結婚した夫と別居生活が始まる。

 ある日、学院の近くで凄惨な事件が起き、その事件と学院でかつて起きた事件が交わりを見せていく様子が、誰も彼もが怪しく思えてくる展開だった。

 鹿原十和子の身のまわりでも、以前の勤務先での事件を思い出すような嫌がらせが起きるなどして、現在進行形で起きている事件と過去のことが入り混じる。ところどころで、鹿原十和子が実母の言う通りに様々なことをこなし、教職に就いたことが語られる。

 また、過去の事件、現在進行形の事件の真相が明らかになっていくなか、事件がきっかけで鹿原十和子が出会ったセクシャルマイノリティ達の会での語りのおかげで、セクシャルマイノリティについて少しだけ学ぶ機会を得られた。鹿原十和子が、この会に参加したことをきっかけに、自分自身の性的指向を自分らしさとして受け止めたことで、夫との離婚、実母との関係に変化があったのは、読んでいてどこか清々しかった。

 「氷の致死量」を読んでみたら、グロテスクな描写がありつつも、歪な親子関係で悩んでいた若者が変わろうとする姿が描かれているなど、ちょっとだけ気持ちが明るくなる描写もあった。性的指向のことは、正常・異常で判断するのではなく、誰のことも傷つけないことが大切であることも改めて知り、考えることができた。