“ 女性と旅と再生をテーマにした、爽やかに泣ける短篇集 ”というところが気になり、「さいはての彼女」原田マハ著を読んだ。
原田マハさんの作品は、これまでに読んだことがないものの、エッセイを読んだことがあり、どんな物語が紡がれているのだろう、とワクワクしながら本書を読み始めた。
本書では、4編の短編が収録されていて、どれも女性の1人旅での出来事などが描かれている。
バリバリに仕事をこなしてきた女性の姿、結婚や出産のことがちらつくキャリアプラン、部下との信頼関係、親しい友人のことなど、それぞれの作中で描かれていることは、読み手にも重なる日常のひとコマかもしれなくて、心を揺さぶられる。
どの短編でも、ただ1人旅を過ごす女性の姿が描かれているのではなく、旅先で出会った人々とのやりとりが、それまでの彼女たちの心情などに変化が起きるきっかけにもなっている。
自分がこれまでに旅した場所をふと思い出してみても、本書の中の出来事みたいな素敵な出会いがその後も続くことは、私には残念ながらない。けれども、本書の中での人々の出会いが、どこか羨ましい。
また、友人と旅することを楽しんでいる女性の姿、1人旅をする女性の姿には、以前読んだ原田マハさんのエッセイの内容が重なるようでもあった。
「さいはての彼女」を読んだことで、旅行に行く、ということが、誰かに見せるために映える非日常を演出するためのものではなく、必要とあらば自分と向き合ったり、そこへ訪れたから出会えたものを味わい、体験することが大切なんだな、ということを思い出させてくれた。