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【読書感想】ばくうどの悪夢

読書
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 比嘉姉妹シリーズ最新作、「ばくうどの悪夢」澤村伊智著を読んだ。

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 「ばくうどの悪夢」は、東京から父の地元に引っ越してきた「僕」が、睡眠中に何度も同じ悪夢を見ていることに気づくことから始まる。

 ある日、僕だけではなく、父の友人の子どもが皆、同じように悪夢に悩まされていることを知り、そのうちの1人が謎の死を遂げる。この時から、「僕」は次に死ぬのは誰なのかという恐怖を抱いたり、子ども達が悪夢に悩まされるのは父親達の過去に原因があるのではないかなど、疑念を持ったりする。

 「僕」が悪夢の原因を探るうち、父の友人の野崎とその妻である真琴に、悪夢についての相談をし、真琴からお守りを貰い、「僕」やその他の子ども達もしばらくは安心して夜を過ごせるようになったはずだった。

 どの作品にも言えることではあるけれど、シリーズものの作品を読んでいる時、見知った名前の登場人物が出てくるとホッとする。たとえ、ストーリーの展開が残酷であろうとも、あの人がどうにかしてくれるだろう、と思うからだ。

 また、本作品の前半で、「僕」が引っ越してきた地域では、「ばくうどさん」と呼ばれている民間信仰が伝わっていることが、語られている。そして、このばくうどさんの祠が、地域のあちこちにあり、住民が自然に信仰していることも描かれている。その土地に根付き、その土地の人々にとっては当たり前にあるものが、その土地に引越してきた者にとってはどこか薄気味悪くて不思議なものとして捉えていることが、「僕」の視点から伝わってくる。

 野崎や真琴が心当たりを調べたことで、ばくうどさんがどんなものなのかがわかってくると、ばくうどさんが悪夢を見せる対象がどんな人なのかも明らかになる。そんな折、思わぬところで、野崎と真琴が琴子(真琴の姉)と再会し、真琴はばくうど退治をする決意が一層強くなる。

 本作品では、どこからどこまでが現実で、どこまでが悪夢なのか曖昧に思うような描写もあった。これもまた、ばくうどさんが見せる悪夢の仕業か、と思えば、ばくうどの悪夢に魅せられる人の気持ちもわからなくはないような気もしてくる。

 「ばくうどの悪夢」を読んでみたら、思わぬところで比嘉琴子が望んでいるものなどを知ることとなった。悪夢を見ることが怖かったはずなのに、いつしかその悪夢に魅入られるようにもなる者もいて、現実の居心地の悪さだとかに向き合う気持ちの強さだとかを考えてみたりもした。